表現の手ざわり

印刷会社の仕事は、
ある時期から大きく2つの方向に分岐し始めました。
ひとつは印刷技術をより深化させ、美術工房のような精緻な仕事を志向する会社。
もうひとつは印刷工程にとどまらず、制作物の全工程にかかわる会社です。

私たち相和印刷がめざしたのは、
企画を立ち上げ、デザインし、印刷するという、
クライアントの課題解決にかかわる連続した工程を、仕事の中核に据えることでした。

それではなぜ、社名に印刷という言葉を冠したままなのか。
それは、印刷という言葉が持つある種の手ざわりを、
私たちは表現活動の核と考えているからです。

電子書籍と紙に印刷された本を比べてみれば明白ですが、
デジタルメディアと印刷物のもっとも大きな違いのひとつが、
手ざわりがあるかないか、という点です。
そしてその「手ざわり」という感覚には、
テクスチャーの質感だけではなく、
表現の質も大きくかかわってきます。

課題解決を導く最良のコンテンツはなにか。
そのためにどんな言葉を選ぶのか。
その言葉はどんな書体でどんな紙にレイアウトされ、デザインされるのか。
目的を正確にとらえたコンテンツとその表現の質が、
制作物に、手ざわりのいい質感のような、体温のある感覚をもたらすのだと、
私たちは思っています。

相和印刷は、そうした質感のある表現を大切にしながら、
課題解決のストーリーを組み上げていきます。
デジタルコンテンツの場合でも、
印刷媒体と同じような、手ざわりの感じられる表現をめざします。

最良の答えは企画書の中にではなく、表現そのものの中にある。
それが、私たちが仕事のなかで持ちつづける矜持です。